介護券その3


Fさんを見ていると、全く人を信用していないのが良く分かる。
福祉事務所のワーカーも、抱えている受給者は星の数ほどいるだろうから、Fさんの生活の細かなところまでは出来ない。

結果。

Fさんは、ズボンを1本しか持っていません。
洗濯すると、はく物が無い。

それは、Fさんが人を信用しない為に、ワーカーにお金を預けないからなんだな。一人で外で買い物が出来る上体じゃないから、福祉事務所が代行するしか手段が無いんだ。天涯孤独だからね。

なんだか虚しくなりません?
生活保護受給者は、全員が怠け者な訳ではないし。
Fさんが、怠け者か、働き者か は、別にして。

明日はわが身かもしれない。
福祉現場に働いているものは、もう少しそういう闇を見たほうが良いかもしれないって、Fさんを見てると思うことがある。

真心で仕事は出来ない。
私、良く書くけど、真心があれば福祉の仕事が出来ると思ったら、間違いだと思うよ。
真心はあったほうが良い。
でも、時に厳しい視線で利用者さんを見ないと、結果として、その方が救われない と言う事もあるんだ。

Fさんは、自分で食欲をコントロールしたり、インシュリン注射の管理をしたり、と、生命を自分で守る事が出来ません。
病院は急性期が終れば退院させられてしまう。
ワーカーさんが、困って、Fさんを当施設に入所させた背景にはどろどろしたものが在ると思うと、考えてしまったりする。

介護保険制度に反対して、今でも、政治的な闘争として「措置制度」の下に介護保険サービスを受けている人は、非常に少ないけれど、存在します。
そういう主義主張として措置を受けている人たちは、頭もいいし、政治信条も在るし、それは闘って貰ったら良いと思うけど、そうじゃない人のほうが遥かに多い。

みなさんの周辺の方に、介護券の方が居られたら、ちょっと考えてみてください。
介護保険なら、朝食に別注文で一品追加する事は簡単。自費でヨーグルトをつければいいんでしょう?
うちの施設でもやってます。
介護券さんは、それは出来ません。
余分なお金は1円も持つことが出来ない建前だから、自費追加分は利用できないんだ。実際に現金があったとしてもね。

これ、これから増えると思う。
絶対に。

そして、介護保険制度の存続にも係わってくる時が来る。
そんな気がする。